果物や野菜の有用な健康栄養成分は、とくに色の濃い皮の部分に集まっていると言われます。でも、皮をむいても、むいてもニンジン色のニンジンは、全身が健康体みたいなもの。ヤル気を出してもらうために、「ニンジン(金品)ぶら下げておけばいい」と表現されるくらい、元気の素を見事に引き出してくれるテクニシャンです。
ところで、このカロテンって何モノなのでしょうか。
正式にはカロテノイド(carotenoid)という健康栄養成分。
カロテンを摂取し、それが体の中に吸収されるとビタミンAに変身します。つまり、カロテンは天然の食べ物に含まれるビタミンAのことなのです。このカロテンには代表的な2種類があります。1つがα、もう1つがβ。この数式にでてくるような記号、なんだか敬遠したくなりますが、どちらもビタミンAの仕込み前の姿。このαカロテン、βカロテンの両方が、ニンジンには豊富に入っているのです。βカロテンはともかく、αカロテンまでも含む市販サプリメントは、なかなか見掛けません。だからこそ、サプリメントに頼るのではなく、毎日のニンジンから摂取することをオススメします。
とくにαカロテンは、最近健康長寿の栄養素と期待されています。
アメリカの第3回国民健康栄養調査をもとにした研究結果によると、成人においてαカロテンの血液中濃度が心血管障害(脳卒中・心筋梗塞など)、がんという二大死因の死亡率と関連性があると報告されています*1) 2)。
健康診断で血液検査をした人の14年間にわたる追跡調査(20歳以上の1万5318人を対象)によると、血液中のαカロテン濃度が高い人ほど、心血管障害とがんの死亡リスクが低く、つまり長生きしたということです。この結果について、研究医師たちはαカロテンが細胞のDNAを防御する役割をもっている可能性について説明しています。
美容だけでなく、健康長寿に対する心がけを持っている人に、ニンジンジュースを飲むこと、そして続けることをオススメします。あなたの体に流れ込んだニンジンジュースは、体の中で、ビタミンAへと変身していくのです。
シリーズ第1回は、「カロテンって何モノだ?」から考えるニンジンの健康栄養成分のお話でした。
(文:西根英一)