果物、野菜など農作物の生産者は、気候と土壌にこだわります。気候と土壌の条件を最大限に生かして「風味」を育てるのです。同じ品種のニンジンでも、日本の土壌からは和風なニンジンが育ち、同じ島国のニュージーランドなら洋風なニンジンが育ちます。
これは、どういうことでしょうか? 理由を探ってみましょう。
ニュージーランドは、日照時間が長く、さらに「一日のなかに四季がある」と言われるほどに昼間と夜間の気温の寒暖差が激しいのが特徴です。また、ニュージーランドの土壌の多くは、火山灰質で水はけが良く、ミネラル分、特に鉄分の含有量が豊富。こんな気候と土壌の条件を最大限に生かしてできたのが、高い糖度と濃縮された風味をもつ農作物です。ニンジンもその一つ。ニュージーランドの土と太陽の匂いがするニンジンが育ちます。
一方、日本は「一年を通して四季がある」という国です。日照時間も、気温の寒暖差も数カ月といった期間を経て刻一刻とゆっくり変化していきます。ゆえに、農作物にも「旬」があります。台地と平野で異なる土壌も特徴です。品種改良により均一化されてきているものの、日本には日本なりの風味漂うニンジンが育つのです。
そんな野菜同士をジュースにして、美味しく食すというのが今回の話のポイント。互いの風味のあんばいが大切で、異なる風味を合わせて「美味」を作り出します。こうして選ばれたのが、ニュージーランドと日本のニンジンでした。互いの持ち味が生かされています。
太陽と大地の恵みを蓄えたニンジンには、体を温める働きがあることが知られています。根菜の多くに温熱作用が謳われていますが、ことニンジンに関しては、それが強く認められ、ニンジンの学名DaucusCarotaは"体を温める"を意味するギリシャ語に由来すると言われます。体温が低いと、免疫力低下や基礎代謝低下を招きます。免疫力が低下すれば、カゼやインフルエンザの流行にまんまとはまりますし、基礎代謝が低下すれば、消費エネルギーが減る分、確実に太りやすくなります。どうぞ、ニンジンを常食野菜の一つにして、カラダを温めてください。 シリーズ第5回は、「太陽と大地が育てたニンジン」のお話でした。
(文:西根英一)